ハンドパンにおける音の発生原理やチューニングプロセスについて
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ハンドパンは見た目もそうですが、音の発生原理も一風変わった楽器です。
おそらく初見では、その音の発生原理を見抜くことは不可能に近いでしょう。
この記事では、ハンドパンにおける音の発生原理やチューニングプロセスについて簡単に説明してみようと思います。
※細かい用語の説明は省きますので、各自ググって頂ければと思います。
音の発生原理
まずは音の発生原理について。
結論から述べるとハンドパンの音の発生原理は、
「トーンフィールド内に発生している圧力」
です。
※補足:圧力がかかってない状態でも音はなりますが、ハンドパンの音には程遠いものになります。
ハンドパンにおいては、ハンマーを用いてトーンフィールドの造形を変化させることによって、トーンフィールド内に圧力を発生させたり圧力分布をコントロールします。
そして、圧力が変われば音高も変わりますので、目標の音高(倍音含む)になるまでハンマリングで調整をしていくというわけです。
※音の発生原理については以下の動画にて詳しく説明していますので、さらに詳しく知りたいという方はぜひご参照ください。
ハンマリングと音高(ピッチ)変化の因果関係
製作に興味があり、チューニングについて調べたことがある人は以下のような説明を見聞きしたことがありませんでしょうか?
「トーンフィールドのこの箇所をハンマリングすると、この倍音が上がる(下がる)よ~」
これはつまり、
①トーンフィールドの特定の箇所をハンマリング
↓
②特定の倍音の音高(ピッチ)が変わる
という因果関係での説明の仕方ですね。
ここまでの説明で音の発生原理を理解して頂けた方ならお気づきかもしれませんが、この説明だと因果関係の説明としては不十分です。
もちろん事実関係として言っていることは正しいのですが、チューニングの本質は理解しづらいと思います。
より正確に説明をするのであれば以下の因果関係を明確にしなければなりません。
①トーンフィールドの特定の箇所をハンマリング
↓
②トーンフィールドの特定の箇所が変形
↓
③トーンフィールド内の圧力分布が変化する
↓
④圧力分布の変化に応じて各音の音高(ピッチ)が変化する
ハンドパンをチューニングするにあたっては、まずこの因果関係を理解したうえで作業することがとても重要です。
自分がアクションを起こした結果、どのような因果を経てどのような変化をもたらしたのか、
常に把握できるように心がけなければなりません。
ハンドパンチューナーの思考プロセス
最後に、私自身がチューニング時の作業&思考プロセスを言語化してみようと思います。
※尚、以下のプロセスはファインチューニングやリチューニング時のものになります。製作過程での1stチューニング時では初手のアプローチが全く違います。
①チューナーでの音高(ピッチ)を確認
まずは音の現在地を知らなければ始まりません。山登りと同じで常に自分(音)の現在地を把握しておく必要があります。
②トーンフィールドの圧力分布状況の確認
トーンフィールドを目視することで確認します。完全に経験則頼りの作業です。
トーンフィールドのどの部分に圧力をかけることの出来る余分があるのか?などチェックしています。
※もしチューナーが実際にチューニング作業をしているのを見る機会があればよく観察してみてください。多分耳を使うのと同じぐらい目を使っていると思います。
③チューニング(ハンマリング)プロセスの構築
①&②で得られた情報をもとにプロセスを組み立てます(「まずこの箇所を変形させてから裏から持ち上げて~」など)。如何にして最短距離でゴール(目標ピッチ)に到達できるかをポイントに思考します。これも完全に経験則がものを言う作業です。
④チューニング(ハンマリング)の実施
目標の造形をしっかりイメージして、トーンフィールドをハンマーで変形させます。ハンマリングの角度や強さなどをしっかりとコントロールするための身体的な経験則がものをいいます。
⑤チューナーで音高(ピッチ)の確認※①にもどる
チューニングプロセスを通じてイメージ通りゴールに近づいているかチェックします。③で構築したプロセスに誤りがある可能性もあるので、こまめに確認を行い必要に応じてプロセスの軌道修正します。
以上を目標の音高(ピッチ)になるまで繰り返します。
ハンマリングすればするだけ金属にとってはダメージが入るので、いかに最短距離で目標ピッチに到達できるかが重要になります。※技術が成熟しないうちはチューニングによって楽器を壊してしまうこともあります。
おわりに
今回はハンドパンの音の発生原理やチューニングプロセスについて書いてみました。
この情報がなにかのお役立てになったら幸いです。